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「アネモネ…全171話完+α」
第三章 Innocent①

アネモネ102

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 「でも、本当のことなんだね」
 「……うん」
 「それでいいの?」
 真っ直ぐな眼差しを向ける優紀の目はつくしを責めていない。
 ホンの少女の頃から彼女はずっとつくしの味方だった。
 「いいの」
 「道明寺さん、つくしのこと思い出してないんだよね?それでも、お互い好きになったの?」
 好き…それはどんな感情だったのか。
 つくしにも今となっては、しかとは思い出すことのできない感情だとほろ苦く微笑む。
 確かに高校生の時の彼を愛して、忘れられなかった。
 けれど、現在の司に対して抱いているこの感情はいったいなんなのだろうと。
 単なる過去への幻想であり、妄執なのではないかと思うこともある。
 それでも…司なのだ。
 どんなに変わり果てていても、あの…彼女が愛して、彼女を愛してくれた男なのだと。 「好きなのかな」
 「…って、あんた」
 「もうあたしもわからないの。ただ、いつまでも高校生の頃のあいつへの感情を押し付けて勝手に重ね合わせてるだけなのかも」
 「…道明寺さんは?あんたのこと」
 それだけはつくしにもハッキリと答えられて、首を振る。
 「好きなんかじゃないよ」
 「そんな…」
 「もしかしたら、同じ人間だとも思ってないかもしれない。…もともとの傲慢野郎に加えて、今じゃあ輪をかけての人非人だし」
 「…人非人って、つくしのことすごい大切にしてくれた人じゃない」
 高校生の頃の司は彼女を大切にしてくれていた。
 それこそ、どうしてこんな平凡な自分を…と思うほどに。
 「道明寺があたしを好きになってくれたのって、ホントすごい偶然が重なりあって起こった奇跡だったんだな、って今なら思うよ」
 「…つくし」
 「何度出会い直しても、あいつならあたしを見つけてくれる…そんな風にどこかで思っていた気がする」
 「……」
 つくしがフッと笑った顔は彼女らしからぬ厭世的なもので、優紀はたまらなくなった。
 「要は一番傲慢だったのはあたしだったってことなんだよね」
 「…そんなこと」
 「いいの。それでも、あいつを好きになったことは後悔していない。中途半端に途切れてしまったことが哀しくて…ここまで未練が残ってしまった気もするけど、これはさ、ある意味神様がくれた最後のチャンスなのかなって」
 「え?」
 怪訝な顔の優紀をよそにつくしが右手にハメられた指輪に目を落とし、そっと撫でる。
 「あの時…道明寺が記憶を失った時、あたし、途中で投げちゃったからさ。あいつはあんなにあたしに対して頑張ってくれたのに、あたしは簡単に逃げ出しちゃった」
 「……」
 「そのことがずっと心残りで、ここまできちゃったんだと思う。この指輪」
 自分には不相応な高価な指輪を目の上にかざし、そっと目を閉じる。
 そうすると浮かぶのは…現在の司の皮肉に口角を上げる顔で、もはや高校生の時の彼の笑顔ではなかった。
 「この指輪をはめていられる間だけ、あの時の続きなんだと思おう思ってさ」
 「…続き?」
 「そう。臆病で卑怯だった過去のリベンジ。…もう、あいつの心を取り戻したいとか、思い出して欲しいなんていうことはとっくに諦められてたんだけどさ。でも、いつまでももやもやしてたっていうか、小骨が喉に突き刺さっているような心残りがあって忘れられなかった。だから…」
 「……」
 「今のあたしにできる精一杯のことを。そしたら…あたし、もう一度歩き直せる気がするの」
 「つくし」
 「精一杯恋を終わらせたい。恋を終わらせて…あたしも幸せになりたい。いいよね?」
 つくしの顔はとても言い切っているほどには割り切っているようには見えない切ないもので。
 けれど強く…逞しく彼女らしく生きようと、自らを奮い立たせていることは優紀にも伝わっていた。
 …いつも、つくしは自分のことは自分で決めるんだ。
 優紀がこの友にできることはいつもたった一つだけ。
 世界中の誰が彼女を否定しても、優紀だけは微笑んで背中押してあげること。
 「…頑張って、つくし。あんたなら、きっと大丈夫。あたしはあんたを応援してる」
 「うん、ありがとう優紀。ごめんね」
 「なにがよ?」
 唐突な謝罪に、優紀が問い返す。
 「あんたの気持ちも考えず、ずっと西門さんとのこと反対していて」
 「……」
 「あたしが心の奥底で応援しきれてなかったから、あんたはあたしにも隠して話せなかったんでしょ?」
 不意打ちに胸をつかれて優紀がつくしから目を反らす。
 誰に賛成されないでも貫こうと思っていた想いを、誰よりも理解して欲しかった親友に悟られていた事実に、目頭が熱くなる。
 「あたしはあんたに平凡でも幸せを掴んで欲しかった。でも、それって自分がそうできなかったから、勝手にあんたに押し付けていた理想とエゴってやつで、あんたにしてみれば、いい迷惑だったよね?たとえ…未来に何が待ち受けていようと、西門さんと生きて行きたかったんでしょ?」
 おずおずと差し出されるつくしの手に優紀も手を伸ばす。
 互いに手を繋ぐようなことはなくなくなっていたが、その手の温もりはホンの少女の頃と何も変わっていなかった。
 「…西門さん、あんたのこと好きだって?」
 「うん。行けるところまで行こうって」
 「そっか。ちゃんと、他の女の人と手は切れたんでしょうね?」
 一番の心配は、彼の家よりそこのところだ。
 「もう、つくしったら」
 「え?聞いてないの?」
 「そこはもちろん、しっかりと!」
 気弱そうに見えても優紀はしっかりしている女だ。
 総二郎がいつまでもちゃらんぽらんな男でいることを許しはしないだろう。
 そして、友として長く歴史を築いてきた優紀に、生半可な気持ちで手を出すような男でもない。
 そこはつくしも親友としての彼を信用していた。
 「あたしはね、戦わないうちに逃げて後悔だけはしたくないの」
 「…優紀」
 「つくし、あんたたちの恋を見ていたからさ」
 「……」
 「あんなことになっちゃったけど、でも、道明寺さんと恋をして戦ってる時のあんたは本当に輝いていた」
 輝いていた…。
 つくしにとっても、もっとも輝いていた時期だったと今にして思う。
 戸惑うことも多くて、司の激しさも深い愛情にも応えきれていなかった。
 それでも、…彼を愛している、失いたくないと。
 素直に彼へとすがって、共に未来を見れた瞬間が確かにあった。
 それだけでもう。
 「あんな恋、滅多にできないよね」
 「そうだよ、一生の宝物だよ!」
 「だから…」
 精一杯恋をしよう。
 終わりの見えている恋だからこそ、今の自分のすべてで。
 「…今の道明寺さん、どんな人?」
 「サイテー最悪な、肥溜めより汚いやつ。ぐっちゃぐちゃ、グーニョグニョ!」
 懐かしいフレーズに顔を見合わせ笑い合う。
 「つくしったら」
 「でも、思えば出会った頃のあいつって、元々そんな奴だったし」
 「……そう?」
 「うん、それを思えば、そういう一面もあいつには違いないんだなって」
 「……」
 「今の道明寺さんのことは少しも好きじゃないの?」
 「……不思議なことに嫌いじゃないの」
 「じゃあ、好き?」
 「肥溜めより汚い奴だけどね」
 「もうそれはいいって…」
 「あはははは」
 消極的な肯定だった。





 「…戻ろうか」
 「あ、うん」
 優紀に言われてそういえば、と思い出す。
 「あのさ、実は、あたし今日はもう帰ろうと思ってて」
 「え?」
 キョトンと目を瞬かせる優紀に、なんと行ったら良いものかと悩んで首を傾げる。
 「それって、道明寺さんも?」
 「…あ、うん」
 確か、そう言っていた。
 「そっか。道明寺さんも忙しい人だものね」
 司の都合だと納得してくれたようだった。
 「じゃあ、みんなに挨拶して…ぁあッ」





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