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「アネモネ…全171話完+α」
第三章 Innocent①

アネモネ099

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 鏡に映った司の姿に驚いて、つくしは振り返った。
 「ちょっと!ここ女性用よ」
 「…別に他に、誰もいねぇだろ?」
 隣接したトイレの方を伺って、肩を竦めているがそんな問題じゃない。
 「気分悪いのか?」
 問いかけられ、苦虫を潰したような顔ながら、一応それが司なりの気遣いの言葉なのだとつくしも気がつく。
 けれど、司にはピルを飲んでいることを話していない。
 …どうしよう、話しちゃう?
 迷って、結局曖昧に首を振るに留めた。
 「…そういうわけでもないんだけど、ちょっと胃の調子が悪くって」
 「腹?」
 「まあ、いろいろここのところ環境が激変だし…」
 「ストレスってか」
 「そんな感じかな」
 その激変の理由の大半が司が原因で、まるで彼を誹謗する被害者めいたいいようだと口を噤む。
 それ以上、口を開こうとしないつくしに司の顔がますます不機嫌に歪んだが、つくしにはその理由が思い当たらない。
 …なんか機嫌悪いけど、どうしたんだろ?
 「さっき、何話してたんだだよ?」
 「…何って?」
 いつ背後から人が入ってるくかと気が気じゃないつくしは、さっさと部屋を退出すべく、化粧台の上に置いたポーチから口紅を出した。
 それを背後から手を伸ばした司が取り上げ、顎を持たれる。
 「なに…」
 「いいから、動くな」
 そして意外に器用な手つきでつくしの唇へとカラーをのせてくる。
 はみ出した赤い色を、司の長い指先が拭って、その感触につくしはゾクリと背筋を戦かせた。
 「ふ…ん、知ってるか?赤は…」
 「発情の色だっていうんでしょ?」
 舐めるように唇に視線を落とす司から目を反らして、ポーチの中へと化粧品を仕舞い込む。
 そして、椅子から急いで立ち上がって、司の横を通り抜けようとしたところを捕まえられ、そのまま奥へと引きずられてしまう。
 「ちょ!?」
 「…黙ってろ」
 司がつくしをトイレの個室に自分ごと押し込んだのと入れ替わりに、ちょうどレストルームへと数人の女性たちが入ってきた。
 そのざわめきの気配に、つくしは体を強ばらせる。
 「こ、こんなところ見られたら…」
 声を潜めるつくしに対し、司は平然だ。
 「こっちの声まで、あっちには聞こえねぇよ。お前がデカい声出さなけりゃな」
 『見た見た?』
 『うん、あれってボディガードってやつだよね?』
 『前々から、F4の西門さんとか美作さんが顔見せる店って有名だったけど、もしかして、なのかな?』
 出てきた名前によけいに固まる。
 つくしの抵抗がないのを良いことに、調子に乗った司が抱きすくめてきて、壁へと押し付けられた。
 「な、なにするつもりよ?!」
 「くっ…お前って成長ねぇな?」
 再会して以来何度となく交わされた問答だ。
 つくしが我に返る間もなく、両手を頭上に纏められ体をまさぐられる。
 「…ぁ」 
 熱い掌がワンピースのスカートをめくり上げ、あっという間にストッキングの上を指先が滑り、ショーツ越しに敏感な部分に触れられてしまった。
 スルスルと撫でる手の動きにビクビクッと震える。
 司の愛撫が手荒だったのは最初の頃だけで、それ以後は挿入があろうとなかろうととても優しい。
 触れられるだけで悦楽への期待が湧き上がり、じ~んとした心地よい快感が満ち溢れた。
 …て、抵抗しなきゃ!
 抑える手にも半ば力が入っていないのを自分でも自覚している。
 「だ、ダメよ!」
 「…別に平気だろ?」
 …平気なわけあるか!
 「バカ言って…むぐ」
 抗議しようと振り向いて口を開けたとたん、唇を塞がれあっという間にぬるりとした舌が入り込む。
 逃げるつくしを追い掛け回し、絡みつき、ズズッと音を立てて唾液を吸い上げられる。
 「ん……はッ……やぁ……おね…が…ぃ」
 髪をかきあげ、うなじから首筋を伝い降りて、司が彼女の襟ぐりに唇を突っ込んで、肩甲骨の窪みを舐める。
 服の上から胸を揉みしだかれたつくしが、息を荒がせ身悶えた。
 「ん……はッ……やぁ……おね…が…ぃ」
 『『きゃあ!』』
 ビクッ。
 『ホント?すごいじゃない』
 『良かったね』
 『…うん、好きって言われて、なんかそれだけで私、もう一杯一杯って言うか。すごい幸せ……』
 突然沸き起こった歓声に、つくしは思わずビクリと身を縮こませる。
 その隙にブラウスの裾から、素肌へと大きな熱い手を差し入れられてしまった。
 「……ぁッ、ん……ゃ」
 快楽と理性の狭間。
 他の人間の気配に、ドキドキと心臓が動悸打って、知られてしまうのではないかと怖いのに、その恐怖にゾクリと背筋が泡立つ。
 だが、それだけでなく…今日は今時分の季節にしては汗ばむほど暑くて、つくしはそのまま司に抱かれてしまうことに抵抗があった。
 たとえこのまま、司の言うとおり息を潜めて彼が満足するまで耐えれば…と思わなくもなかったけれど、どうしても耐え難いことがある。
 押さえつけられていた手を離された途端に、つくしは体を捩り、肘で司の頭の侵入を阻んでそれ以上の行為に抗う。
 半ば彼の与える快楽に蕩けて熱い息を零しているくせに、なおも頑なに抵抗するつくしに、司が不貞腐れた顔で体を離す。
 「しゃ、シャワー」
 「は?」
 「ど、どうしてもしたいなら、お邸に帰ろうよ!それで、シャワー浴びてから、それから、し、しよ?」
 「なんだ、それ?気にしねぇって言ってんじゃん」
 「やなの!」
 ただでさえ肌を合わせるのはいまだに慣れないのに、汗臭い自分を思うと涙が出るほど恥ずかしい。
 どんなに恥ずかしい姿を見られても、浅ましさを知られても、恥ずかしさをぬぐい去ることなどできなくって。
 真っ赤になって涙目のつくしを見れば、仕方なく司が折れた。
 小さな震え声がこの上なく可哀想で、愛しくて。
 勝気なこの女が、こんなに弱々しい姿を見せるのは自分だけなのだという優越感が湧き上がる。
 …類だって知らねぇはずだ。
 誰よりもこの女を知っているかのように振舞う親友。
 彼女の心の機微や体調に敏感で、まるで司との肉体関係など大したことではないと意に介さず、親密な眼差しを交わし合う男。
 『…俺にとっては端くれどころか、唯一の女だよ』
 うそぶく類の言葉が脳裏に蘇る。
 …ふざけんじゃねぇ。
 …こいつは俺の女なんだよ、お前の出る幕じゃねぇ。
 「ど、道明寺?」






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