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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第七章 裏切①

昏い夜を抜けて299

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 6月もそろそろ終わりに近づいてきた。
 類の周辺も、なんだかんだと株主総会への準備や、転勤に向けての諸々取引先への挨拶など、なお一層忙しさが加速してるようにつくしなども思う。
 三田村のように、彼のスケジュールを管理したり重要な仕事を任されているわけはなかったけれど、それでも同じ部屋で仕事をしていればわかろうというものだ。
 …今日も、遅いのかな。
 ここのところ、類は外回りが多く、つくしとの接触も少ない。
 もちろん、屋敷に帰っているのか、一緒のところへ帰ることがなくなって以来、本当に仕事だけの関係に戻っていて、個人的な話をする機会など皆無にも等しかった。
 …本当に、仕事だけの関係ってことだよね。
 ため息をつくようなことじゃないのに、…気がつくとため息をついてしまっている。
 「…つくしちゃん!お昼いかない?」
 「え?あ…はい」
 つい先週から、類つきの秘書に異動になった眞子が声をかけてくる。
 気安いといえば気安かったが、余人が増えただけによけいに類との距離が増えた気がした。
 「なに?つくしちゃん?」
 当然、つくしの屈託など知らない眞子が、彼女の視線の意味を捉えそこねて首を傾げた。
 「あ、ごめんなさい。ご飯、今行きます」
 「うん。わぁ、今日もお弁当なんだ~。えらいねぇ」
 「ん~、習慣ってだけだから」
 眞子は弁当持参ではなかったし、そうなると専務室はここのところ無人がほとんどで、ひとりっきりで食べるのはどうにも気が塞ぐ。
 なので、社食通いの眞子に付き合って、弁当を持って社食に行くことがここのところのつくしの日課だった。
 以前は嫉妬や羨望で白い目で見られることも多かったが、類とどこの誰とも知れない(つくしのことはバレていない)シンデレラ・ガールの記事が出てから、周囲の目も変わってきたようで、職場の居心地も悪くない。
 …ホント、このままここに残っても、なんの問題もないんだよね、きっと。
 出世だって望んでいないのだから、それは多分不可能なことではなくって…。
 「…あの?」
 エレベーターを降りたところで、若い女の声に声をかけられ、つくしと眞子は振り向く。
 「「あ…」」
 「あの、牧野さん、ですよね?」
 それは、以前、志保子との会談の折に一度だけ顔を合わせた、類の元婚約者…藤堂まり子だった。





 「すいません、本当に。せっかく下に降りてらっしゃったのに、こちらまで案内させてしまって。これからお食事に行かれるところだったんですよね?」
 申し訳なさそうにシュンとするまり子は、つくしのイメージするお嬢様とはどこか違う。
 その美貌の相似からイメージする静ともまた違い、ある意味これこそお嬢さま!といった世間一般の人間が思い浮かべるような女性で、どこか自信なげな微笑みは楚々として頼りなげで、きっと男の人は、こんな人を守ってあげたいって思うんだろうな、とつくしに思わせた。
 類のいない専務室で、お茶を差し出す。
 「あ、ありがとうございます。ご迷惑をおかけした上に、お茶まで…」
 丁寧に頭を下げるまり子に、好感を抱く。
 「…いえ、どうせお弁当を持ってきてますから。あの、藤堂さんはお食事、すまされたんですか?」
 「あ、…いえ。その…類さんがいらっしゃったら、ご一緒できるかもしれない、と思っていたもので」
 ガッカリしたのも顕な寂しそうな顔に、つくしの方が罪悪感を感じさせられ、昼直前になって急に外出した類を心の中でタコ殴りにする。
 仕事には違いなかったが、なんだか知らないが、出かける直前のこと。
 かかってきた電話の後、軽く食事を取ってから他社へ訪問する予定だったのに、急にその会社の近くにあるお気に入りレストランだかで、フルーツグラタンを食べたいとか言い出して、そそくさと出かけて行ってしまったのだ。
 フルーツグラタン…と聞いた時の、いつもは怜悧な三田村の微妙な顔が思い浮かんで、つい吹き出しかける。
 つくしも彼の気持ちは重々わかるが、彼女と暮らしている間も、類は妙な嗜好や突拍子もない行動で、彼女を引き攣らせることも度々だったのだ。
 …見た目は完璧な王子様なのにね。
 ふと、まり子にジッと見られたことに気がき、つくしが驚いて目を瞬かせる。
 「あのぅ?」
 「あ、私ったらすいません」
 「いえ、どうされたんですか?」
 まり子が、困ったように口ごもりつつ、それでも意を決したように口を開いた。
 「牧野さんは、類さんの高校時代のお友達なんですよね?」
 「……えっと、ええ、まあ」
 どうやら志保子は、まり子には類とつくしのただならぬ関係は話していないようだ。
 …そりゃそうか。ある意味恥さらしだもんね。
 名家の御曹司が、庶民の女に手を出し、婚約者がいる(当時)身だというのに同棲していたのだから。
 「それに、静お姉さまともご交友されていらしたとも伺ってるんですが…?」
 「ええ、ちょっとしたご縁で。その…類、いえ花沢さんが私の高校時代の先輩だったので。私にとって、静さんは憧れの女性なんです」
 「わかります。私も小さい頃から、お姉さまの活発さ、聡明さにいつも感心して、ああいう方みたいになれたら…ってよく思っていました」
 「よくご一緒されたんですか?」
 「いえ…、私、お姉様とは年が少し離れているんです。そうでなくても、お姉様はご活発で、英徳のお友達といつもご一緒してらっしゃいましたし」
 「それって…もしかして、F4とか?」
 「あ、はい。類さんや道明寺さん、西門さんや美作さんですね」
 「…なるほど」
 「その頃、私はとても引っ込み思案でしたので、とてもその中に入っていけるようなことはできませんでしたから、いつも遠く拝見するばかりで」
 そういえば、まり子はつくしよりもなお年下だったか。
 あえてチェックしたことはなかったが、彼女が類と婚約していた当時、同僚の友人が単なる世間話として話してくれていたような記憶を掘り起こす。
 「たまに伯父様のお宅に伺って、庭先で遊んでらっしゃるお姉様や類さん、他の方たちを羨ましく拝見してたんですよ」
 「…そうなんですか」
 幼い頃の二人。
 つくしがけっして踏み入ることのできない遠い過去。
 その二人の絆を思うと、わずかにチクリと胸を刺す痛みを自覚する。
 …あたしが嫉妬する筋合いじゃない。
 そう思うのに、高校時代、静を思って遠くを見ていた類。
 その彼を想って胸を痛め、自分なんかが嫉妬することさえできないという哀しみを抱いた過去を思う。
 そして…現在。
 あの時の自分と類の関係と、少しでも変わったのだろうか。
 類は自分を好きだという。
 そして自分も。
 それなのに、ふたりの間にはなお、深くて底が見えない断裂が存在するのだ。
 たとえば、目の前の女性が、静にとってかわったとしても、おかしくはない。
 …それとも、あたしの中だけのことなの?
 「もしかしたら…」
 「え?」
 またも自分の中に深く入り込んでしまって物思いに耽っていたことに、つくしが気がつき顔をあげる。
 「その…もしかして、牧野さんは、類さんのお好きな方をご存知ですか?」





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