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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第七章 裏切①

昏い夜を抜けて296

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 「どうだかな」
 視線を伏せるあきらの顔は、投げやりではなかったが、口にしたことに自信があるようでもない。
 「…なんだよ?フられたら、牧野のことはもうよくなったのか?」
 「そういう意味じゃない。俺には類が牧野を幸せにできるか、できないか、それを論じる資格が無いってことだ」
 建物の庇から一歩出て空を見上げると、今日は雲が厚く、西門邸の灯りがなければおそらく闇の深い夜。
 月が見えない。
 いつまでも高校生の時の一幕を忘れがたく思っていた自分もまた、恋に恋していたのだろうか。
 いや…そうではない。
 その一瞬もまた美しい彼の真実の一つではあったけれど、再び出会ったつくしに、彼は新しく惚れ直したのだ。
 わざとらしくない寄り添うような優しさや、風に耐える草花のような強さに改めて惹かれ、愛した。
 勝気な女だと思っていた。
 彼の生まれ育った世界で、見たことがない強烈な光に満ちて強い女。
 自分にない何かを確かに知っている彼女。
 彼女が見た世界を知りたい。
 彼女ならばきっと見せてくれる。
 けれどその強さの中には、たくさんの涙や哀しみがあった。
 そんな彼女を守ってやりたい。
 手の中で包み込むように大切に彼女を愛していければ…と。
 「牧野に惚れてる時点で、客観性なんて欠いてるんだ。どいつもこいつも、俺以上に彼女を幸せにしてやれる男なんているはずないって、思うもんだろうよ」
 「ぶっ…、なんだかんだ言って、お前だって十分俺様だよ。お前のこと、牧野は優しい‘おにいちゃま’かなんかだと勘違いしてるみたいだけどな」
 「お前らと比べれば、誰だってそう思われるさ」
 実際、つくしの中での自分の位置などわかっていた。
 おそらく総二郎の言うとおりなのだろう。
 それこそが、一番のネックで男だと思われていない、本当のところのフられた理由なのかもしれないとあきらは自嘲する
 けれど、彼女を困らせたくなかった。
 ただでさえ、司とのことで傷つき、類のことで苦しんでいるつくしをこれ以上追い詰めたくなかったのだ。
 「類も変わってきてる」
 「……」
 「お前だってわかってんだろ?」
 「だからなんだ?惚れた女にあんな顔させておいて、よくも…」
 苦虫を潰したような顔で吐き捨てる友の顔に、あきらが吐息を一つ落とす。
 「…だから、牧野なのか?」
 「なにがだよ」
 「惚れた女には手を触れるのが怖いから、お前はダチへの友情と忠義で自分の弱さを立て直そうというのか?」
 「……」
 以前の彼らはけっして互いの領域に踏み込もうとはしなかった。
 以前…それはつくしと出会うまでまでの彼らで、司とつくし、二人の恋の顛末をきっかけに再びまた彼らの関係は元の希薄なものに戻った。
 互いの心には踏み込まず、適度な距離を保って…。
 だが、いま、つくしの出現をきっかけに、また彼らの関係も変わりつつある。
 総二郎の弱さや屈託に気がつきながら、それにあえて知らぬふりを続けてきたあきらが、今あえて口にする。
 「恋愛なんて…相手に執着しすぎるから互いに傷つけるし、傷つけられる」
 さんざん女道楽をしてきた男がそれを言うのかと、自分で自分が総二郎はおかしかった。 
 「俺は牧野のことが嫌いじゃない。…いや、むしろ好きだろう」
 「…一人の男としてじゃねぇだろ」 
 「それの何が悪い?確かに、あいつが類と寝ているからといって、嫉妬する気にもならねぇし、他の誰を想っているのだとしても平気だ。けど、あいつには幸せになってもらいたいと思うし、類や司とじゃ無理なら、俺が大事にしてやりたい」
 異性の間の友情と愛とでは、どう違うのだろうか。
 むしろ、エゴがないだけ、純粋なのかもしれない。
 「…お前はそうでも、実際にお前と付き合うなり結婚ってことになったら、牧野はそうはいかねぇと思うぞ?」
 「なんだよ、それ」
 「お前は平気でも、お前が他の女と遊ぶような真似を続けて、あいつだって苦しまないはずがない」
 長年の親友からでさえ、信用されていない自分がおかしい。
 「だから、今は昔ほど遊んでねぇって。…第一、さすがの俺も、牧野にコナかけておいて、他の女に手をだすわきゃねぇだろ。牧野が俺のものになるなら、浮気はしねぇ」
 「…そこまでの覚悟があるのに、恋愛じゃねぇって?」
 同じ遊び人と言われきても、あきらと総二郎のアイディンティティは真逆に近い。
 人妻との不毛な恋を繰り返してきてはいても、あきらはあきらなりに彼女たちを愛していたし、いずれはただ一人の自分だけの女性を愛し守るのだという覚悟を持っていた。
 けれど、総二郎にとっての女性との関わりとは、刹那的な慰めにすぎず、たくさんの女性と交遊を持ちながら、その誰にも執着せず、束縛するのを畏れていた。
 「言ったろ?俺は牧野を束縛するつもりはない。…ああいう女だから、俺と付き合うとなったら、あいつも他の男と遊ぶような女じゃねぇが、他に幸せを見つけられるなら、それはそれでいつでも解放してやれる」
 「……」
 「ただあいつのあんならしくねぇ顔、見ていたくなくねぇんだよ」
 それも愛情の一つには違いない。
 つくしが望めば、確かにそれはそれで一つの幸せには違いなかった。
 「…まり子さんのことはいいのか?」
 たぶん違うだろうと思いながら、問いかける。
 総二郎は親友の婚約者を寝盗るような男ではない。
 案の定、
 「それこそ勘違いすんな。そんなんじゃねぇ。けど、後悔はしてっかな」
 「後悔してんのか?」
 「……ああ。あの娘は本当に類のことを好いてた。そのことに同情して、むしろ逆に悪いことをしたと思ってる。類の奴に、つけ込むキッカケを作っちまったからな」
 「やっぱ、アレは類の仕業だと思ってんのか?」
 「そりゃ、そうだろ。どう見たって、都合が良すぎる。俺はこんな身の上の男だ。弟子の大半は女だし、場合によっては若い女と二人っきりで茶室にこもることだってあるんだ。わざわざまり子さんを上げ連ねる必要もねぇし、相談したいと言われて外で会った時だって、ずっと二人っきりだったわけじゃねぇ。たまたま、余人が離れたホンのわずかな間をとらえられて、密会って…最初から張り付いていたとしか思えねぇ。どんな偶然だよ」
 あきらにしても怪しとは思っていた。
 だが、類もまた司同様、自分の結婚についてあからさまにどうでもいいという態度を隠そうとしていなかった。
 ただ…母親の紹介だった。
 そして、まり子はあまりに静に似すぎていた。
 外見だけが。
 まり子個人を見れば、悪くない娘だとあきらも総二郎も思う。
 楚々とした美貌と、突出した個性はないが、家庭的で善良な娘だ。
 名家の令嬢としては気位の高さや、我の強さもなく、良くも悪くも『いい娘』だったのだ。

 類の母親はおそらく、静の容姿が類を惹きつけると考え、その実家の威勢と彼女自身の従順な性格を気に入ったのだろう。
 しかし、類にしてみれば、自分を捨てた静に似た女をそばに置くことに対してどう思っていたのだろうか。
 「じゃあ、優紀ちゃんのことは?彼女のことはどう思ってるんだ?」





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NoTitle

この話は正直つまらないのでアネモネの方更新してください

こんばんは。

最近また燃え尽きて読み専状態の丸々猫です。
こんばんは。
|ωΦ)コソ

『アネモネ』も『昏い夜を抜けて』も毎日楽しく読ませて頂いております。
もう続きが気になって気になって。
毎日更新とても嬉しいです&尊敬しております♪ヽ(。-ω-。)ノ
私ももう少し更新せねばです。汗


通院も終わり、延び延びになってた車も納車され、
漸くあれやこれやが終わりそうです。
これで少しは時間的余裕が出来るかなと期待。

相変わらず仕事は忙しいんですけどね。(_ _;)ゞ
その節はお見舞いのお言葉&ご助言ありがとうございました。('∇'*)

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NoTitle

こんばんはっ!お久し振りですみません!
本当に…毎日毎日、更新をされている事に
掌ばかりか額をも床につけて尊敬の意をお伝えしたいっ
そうすればきっと…私にも…御利益が…(←???)
私はスピードが遅くて。。。ですね。。。

さて。今日はあきらくんのお言葉に納得。
「恋愛なんて…相手に執着しすぎるから
互いに傷つけるし、傷つけられる」
遠い(?)若かりし日の頃の自分や周りの
あれやこれやを思い返せば
まさに、その通りだったなぁと思ってしまいました。
しかもまだまだ若いのに、
誰もが「これが最後の恋だ」と思っていた節が
あった様な気も致します。あぁ、懐かしい(笑)

失礼致しましたっ!!!!!



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