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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第七章 裏切①

昏い夜を抜けて294

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 「意味わかんねぇんだけど?」
 憮然とする総二郎に、平謝りに謝るしか他がなく、つくしは黙って頭を下げ続ける。
 「…頭上げろよ」
 「ホント、ごめん。あんたには、よくしてもらったのに、こんなに急に勝手なことで」
 「つーかさ、仕事都合だろ?勝手とかそういう問題じゃねぇのに、むやみに頭を下げんな」 
 結局はそうなのだが、本当のところは違う。
 あきらの場合とは異なり、総二郎につくしへの恋愛感情は認められなかったから、ついズルズルと居心地の良さにかこつけて、頼ってきてしまっていた。
 だが、先ほどの会話でもそうだったが、そこに恋愛感情がないにしろ、総二郎は本気でつくしとの未来を模索しているのだと、鈍い彼女にもわかり始めたのだ。
 そのままでいられるはずがない。
 フランス行きは…実はまだ迷いがある。
 承諾するのなら9月からフランスでの新スタートを切ることになるが、今月下旬くらいまでには返事をして、7月、8月には渡仏することになるだろう。
 …類とたもとを分かって。
 「別に、茶のことはかまわねぇけど」
 「今までどうもありがとう」
 「でも、飯は付き合えよ」
 「……はい?」
 「渡仏するのは来月か、再来月なんだろ?」
 「そ、そうなんだけど…」
 言ってる意味が通じてないのだろうか。
 平然と返す総二郎の顔は、『だから?』と言っている。 
 「準備とかあるから、呑気に習い事とかしてる気分じゃねぇつーのは、まあ、わかるよ。でも、別に週1くらい息抜きに、美味い飯食いに行くのは問題ないんじゃね?」
 「いやあ、それはさ」
 「お前、そんな遠まわしな言い方で、男をフれるとかマジで思ってる?」 
 「……へ?」
 どう言えばいいのかと、言葉を選んでいるつくしを総二郎がニヤニヤと人の悪い顔で見降ろし、噴き出した。
 「ぶっ。お前の言いたいことはわかってるよ」
 「…て」
 「あきらと違って気長じゃねぇから、いつまでも待ってるとか殊勝なこと言うつもりねぇから。俺は欲しいものはガンガン取りに行くタイプ」
 「……」
 何をいわんや。
 「ま、それでも司ほど俺様なわけでもない。お前のペースは守ってやるさ。それにフランス?俺にとってはフランスだのイギリスとの距離は、別になんら障害にならねぇんだけど?そりゃ、今ほどのペースで会うってわけにはいかねぇけど、昼も夜もなく会いたいほど、俺らって熱烈に恋愛してるわけでもねぇし、第一、海外講演っていうのも、最近じゃけっこう増えてるから、俺もけっこうヨーロッパには行ってるぜ」
 「そ、そうなんだ」
 いや、そうじゃなく。
 つい、総二郎の平然とした物言いに流されてしまいそうになったが、言いたいことはそこじゃなかった。
 「だから!…その、口説かれたりとか無理だって」
 「なんで?」
 「なんでって、あんたの申し出は嬉しかったけど、今のあたしには…」
 「類と別れたんだろ?」
 「……」
 不穏なものを感じて、肯定するに肯定できない。
 複雑な顔をするつくしの額をコツンと小さく叩いて、覗き込んでくる美貌は、類や司とはまた違う魅力を放ち、彼らよりも数段セックスアピールを濃厚に含んで艶めかしい。
 「バーカ。さっき言ってただろうよ。今更口ごもってもおせぇんだよ」
 「そういう問題じゃないから」
 「そういう問題だろ?別に俺はお前に男がいてもかまわねぇし」
 「西門さん!」
 「今更、ライバルの一人や二人でたじろぐほど、俺、経験値低くないから」 
 「……本気で好きになった人に、迫ったことなんてないんじゃないの?いたっ」
 ピンッと額をけっこう本気で叩かれて、悶絶するつくしの頭をグシャグシャッとかき混ぜる総二郎が憎い。
 「やめてったら!いまっ、本気で痛かったんですけど!?」
 「知らねぇくせに、憎まれ口叩くからだろ?」
 「…フェミニストじゃないわよ!もうっ」
 くくく、と笑う総二郎は本当に楽しそうだ。
 子供みたいな顔は可愛いと思うのに、減らず口はちっとも減らなくて、とてもじゃないが、つくしでは太刀打ちできない。
 「お前は、押しに弱い女だよ」
 「なにそれ」
 「お前を手に入れようと思ったら、あきらみたいに待ってるだけじゃ、手に入らねぇ」
 涙目になって額をこすりながら、総二郎を見上げる。
 さぞや悪い顔をしているだろうと思っていたのに、案に相違して総二郎は苦笑していた。
 「お前知らないだろ?」
 「なにを、よ」
 「俺、けっこうお前のこと好きなんだぜ。不覚にも、どうやら、色気も感じてるらしい」
 「はあッ?」
 目を見開くつくしへと、総二郎が再び顔を寄せ…。
 「…ですから」
 「ええ。よろしくお伝えくださいね」
 人の気配に、戯れあっていた(総二郎だけかもしれなかったが)二人が居住まいを正す。
 内心ドギマギしながら、つくしが視線を上げると、ちょうど家元夫人とこちらへと歩いてきた女性の一人と目があった。
 溌剌とした表情の魅力的な女性で、つくしと目が合うとニッコリと微笑んで会釈され、自然、つくしも笑んで会釈を返す。
 「あら、牧野さん、こんばんは」
 「こんばんは、お邪魔しております」
 すっかり気安く挨拶し合う仲になった総二郎の母とも微笑みあい、挨拶を交わした。
 「若宗匠ッ」
 「あ!」
 「…わ、若宗匠」
 手習いに来ているお弟子なのだろう、家元夫人と現れた数人の若い女性たちが、総二郎に気がついて、ざわめき黄色い声をあげる。
 「…こんばんは」
 「「「「こんばんは」」」」
 つくしと目があった女性も総二郎と挨拶を交わし合い、会釈して通り過ぎた。
 「家元夫人が直々に見送りになんて…、気の張る方からのご紹介の方たちですか?」
 総二郎が不審げに尋ねると、家元夫人が首を振る。
 「妙心寺での献茶式で、お手伝いしてくださるお嬢さんたちなのよ」
 「へえ?あまり見たことのない顔ばかりだったけど」
 「野島さんのところの直弟子の方たちで、本家の作法を体験させてくださいって、連れてらしたのよ。ちょうど、ハンガリー大使公邸での茶道公演の時期とも重なりますし、人手が足りなかったのでお願いしたの」
 「野島さんの…」
 「あ、でも一人だけ、高階さんのご紹介のお嬢さんだったわ、確か」





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