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「アネモネ…全171話完+α」
第二章 Platonic Sex①

アネモネ054

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 憤っていた司も、経済界の水にどっぷりと浸かった身。
 取引相手になりえる相手の出現に、瞬時に経営者の顔に立ち戻る。
 一通りの挨拶をこなし、場所が場所なので社交辞令がわりの互いのプライベートの話へと話題は移った。
 「奥方は、ジウド家の血筋の方だとか」
 「ええ。母親は日系アメリカ人で、現地での親善パーティで出会ったんですよ」
 「お美しい方だと伺っています」
 どんな顔でおもねっているんだと、つくしがうろんな顔で見上げるも、司の顔は威風堂々とはしていたが、普段の傲慢さをひっこめ、礼儀にかなった言動をとっている。
 つくしに見せる顔とはまったく異なり、真摯な対応は、内心はどうあれ相手に対しての敬意が伺えた。
 一社会人としても、経営者としても、立派に地位を築いた人間の余裕すらあって、以前にも思ったことだったが司が道明寺財閥の代表として大きく成長していることをまざまざとつくしに見せつける。
 「実は先日、イギリス王家の園遊会であなたの婚約者殿をご紹介いただいたのですよ」
 「…アリッサとですか?」
 司の婚約者はイギリス王家の流れも組むれっきとした貴族の出身で、資産家としても名を連ねる大企業の令嬢だ。
 「ええ、とても麗しい方でした。華やかで聡明で…とてもユニークな女性だと感心しましたよ」
 司の口角が皮肉にあがり、揶揄るようにクスリと笑った。
 「ユニーク、ね。まあ、ある意味そうですね」
 「彼女とお会いして、代表にますます興味がわきました。代表とは似たもの同士だとおっしゃっていたのでね。きっと、僕とも気が合うと思っていたんですよ」
 …気が合う?
 およそ、司と気が合う人間などいるのだろうか。
 幼い頃からの友人であるF3ですら、今の司は扱い難く、大きくはなかったが互いに溝感じているのは傍目にも明らかだった。
 司の婚約者の噂話を聞くともなく、どこか意識の遠いところで聞きながら、週刊誌の写真をつくしは思い起こす。
 淡い豊かな金髪にブルーの瞳、ハリウッドの女優にも比肩する華やかな美貌の女性は、司と並ぶとまるで生まれながらにして一対であるべき存在であるかのようにお似合いだった。
 写真の中で見る司は、高校生の時の彼とはあまりにも違いすぎて、本当に彼がつくしと恋愛したことがある男なのかと疑念にかられることがあった。
 それとも、母が玉の輿を夢見たように、つくしもまたたった一人、高校時代の司は妄想の中で愛した男なのではないかと自分の正気を疑い恐怖したこともある。
 非現実的で手が届かない彼の婚約報道は、どこか遠い空の下のつくしとは関係ない世界での出来事でしかなかったのだ。
 そのせいか、こうして再会することになったその時まで、彼に婚約者がいることに対して特に感慨めいたものを感じることがなかった。
 …すっごい美人の婚約者。お似合いじゃん。
 そんな風に他人事に感じるばかりで、いつもどこかに鈍い痛みがあったけれど、それが司の婚約で痛みを増すとか、いっそ踏ん切りがついて痛みがなくなるとか、そのどちらの効果にもなりはしなかった。
 なのに、こうして間近に司を前にしてしまうと、とたんに身の内に宿る小さな棘の存在が急浮上する。
 …関係ない。
 …気のせいだから。
 そう思う端から、浮かべた微笑が強張って、まるで張り付けた仮面のようだと我ながらおかしくなって、一方では司や他の人間に不自然に思われるのではないかと、つくしは怖かった。
 「…ですね?」
 「……」
 「おい」
 気が付けば、豊島に話しかけられているのに気が付かず、司に咎められる。
 「え?あ…すいません、なんでしょうか?」
 我に返ったつくしが問いかえすと、司が肩を竦め豊島が笑った。 
 「あの…何か失礼をしてしまったでしょうか?」
 「いえいえ。牧野さんのような素敵な女性をエスコートできる代表が羨ましいと言ったのですよ。代表と交際されているのでしょ?」
 「…は?」
 とんでもない問いかけに、ギョッと司を仰ぎ見る。
 実際、誰から見ても『愛人』然としていたのだとしても、よりによって司の婚約者の知り合いに対して肯定などできるはずもない。
 「スベンソン嬢とも、あちらでは親しく交友させていただきましてね。うちの家内などは、スベンソン嬢の恋人にすっかり惚れこんでしまって、私の方が妬けましたよ」
 「……」
 ははは、などと屈託もなく笑われて、つくしとしては返答のしようもない。
 いま、スベンソン嬢…アリッサ・スベンソン、司の婚約者の恋人だとかこの男は言ったのだろうか。
 しかも、自分の妻がその恋人だか愛人に惚れこんでと、屈託なく笑う目の前の男が信じられない。
 …セレブって、こんなものなの?
 名だたる名家の令嬢は婚約者以外の男を堂々と恋人に持ち、そのとうの婚約者は平気で女をとっかえひっかえベッドに引き入れたあげく、平気で愛人(=つくし)を自分の婚約者の知人に指摘されても平然と否定しもしない。
 …り、理解できないわ。
 つくしの沈黙をどうとったのか、含んで艶めいた視線で一撫でし、彼女の右手薬指に輝く指輪に目を留めて、訳知り顔に豊島が一つ頷く。
 「あなたを代表がどれだけ気に入っていらっしゃるか、よくわかりますよ。来週の私との会食に、牧野さんもいらしてくださるのでしょうか?」
 「わ、私ですか?」
 いかなる場所へも自分を同伴するように司に迫ったつくしだったが、さすがに西田や他のボディーカードがいる場面にまで顔を突っ込むつもりはなかった。
 もしかしたら、司の同伴者ではなく単純に警護担当として随従しているかもしれなかったが、なんと説明してよいのかと迷う。 
 「もし牧野さんが同伴されるのでしたら、特別な趣向を楽しみませんか?刺激的な一時を、憂さを忘れてご一緒しましょう」
 ニンマリ笑った顔が司へとおもねる。
 受ける司の方はあまりご機嫌麗しい感じでもなかったが、特に不機嫌なわけでもない。
 「……アリッサとも楽しまれたということですか?」
 「ええ、イギリスで我々はとても有意義な時間を過ごすことができ、スベンソン家、豊島家の友好関係をより円滑に結ぶことができたと確信しています」
 自信たっぷりに頷く豊島の顔に反して、司の方は皮肉気だった。
 だが、一刀両断に切り捨てることもなく、
 「まあ、かまわないでしょう。お望みなら…」
 チラッとつくしを見た司の目が、どこか不穏なものを含んでいるようで、豊島の手前問い詰めることができなかったが、彼女の背中をひんやりとしたものが滑り落ちた。
 …なんで、あたしまで。
 だが、もともとパーティでの同伴を西田にも依頼されていたのだ。
 つくし自身もなるべく司のそば近くに控えたいと、自分から申し出ている。
 「では、会場は私の方がご用意いたしましょう。秘書を通じて…」
 話の途中、レストルームからのざわめきが会話をとぎらせる。
 秘書と店員に支えられた女性が、なんとか自分の足で歩き、レストルームから出てきたのだ。
 豊島がそれを見て取り、歩み寄る。
 「…大丈夫ですか?尾崎さん」
 「ええ、申し訳ないことですわ。せっかくお時間をとっていただいたのに、わたしったら」
 腹部の痛みに顔を歪めながらも、女性の声音はしっかりとしていた。
 女性がつくしへと視線を向け、その顔を認めて礼を言う。
 「あなた…。なんとお礼を申し上げたらよいのか」
 「いえ、急いで病院へ行かれた方が良いですよ。もし腹膜炎を起こしているのなら、容体が急変することもありえますから」
 頷いて再び礼をいいつつ、つくしの横に立つ司にも気が付き、大きく目を見開く。
 「…道明寺代表」
 「お久しぶりです」
 司も見知った人物だったのだろうか。
 不審げに女性を見ながらも、会釈をかわす。
 「牧野が何か?」
 「まあ、道明寺代表のお連れの方でしたの。お嬢さんにはとてもお世話になったのですよ。具合が悪い私をそれは親身にお世話してくださって。改め、お礼に伺います」
 重ねて礼を言う女性へとつくしが改めて、遠慮する。
 「いえ、当たり前のことをしただけですから、本当にお気になさらないでください」
 「…誰にでもできることではありません。あなたの前にも何人もの人がレストルームへといらしたけれど、私の様子を見ても見て見ぬふりで、誰も声をかけてはくれませんでした」
 しばらくすがめた目でそんな二人のやり取りを見守っていた司だったが、顎をしゃくって、そばに控えていた村越に指示を出す。
 「うちのリムジンで、近くの大学病院までお連れしろ。タンカーは大げさになるが、エントランスまでとはいえ、尾崎さんの様子では歩いていくのもキツイだろ。お前が抱えてさしあげろ」
 「いえ、そんな」
 「そうされた方がいいですよ」
 司の配慮に驚き感心しながら、つくしも大きく頷きかけた。





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