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「アネモネ…全171話完+α」
第一章 Change the World②

アネモネ034

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 唖然とつくしを見上げていた司が瞼を上下に何度か瞬かせ、やっとその意味が脳裏に染み込んだように、にやりと笑って立ち上がる。
 そして、あっという間にドア口に立っていたつくしの元へと歩み寄り、彼女の華奢な体を引き寄せた。
 言葉の勇ましさとは裏腹に、男に触れられたつくしの身体がビクリと震え、仰向く顔が青ざめ唇が震えている。
 その顔に、かえって彼女の本気が伺え、この勝気な女のそんな表情が、司の加虐性を煽った。
 長い形の良い指先で、薄く開いたつくしの唇をなぞると、彼女のほの赤い舌先が見えて、すぐにでも喰らいつきたい、甘い舌先を味わいたいと逸る自分に驚く。
 …まるでセックスを知らないガキみたいじゃねぇか。
 自分の身の内を焼く高揚とした欲望と興奮に自嘲する。
 ただ突っ立っているだけで彼を振り回す、生意気な女に舐められたくなくって、そんな自分の戸惑いを振り払って、唇の中へと強引に指先を押し込む。
 「ぅ…ん」
 つくしの舌は、あまりそういうことに慣れていないのか司にされるままで、以前のように噛み切ろうとはしなかった。
 ただ耐えるようにジッと強張って固まっている。
 女の口など、具合の違う下の口とそう変わりはないと思っていたのに、指先に感じる温かく湿った優しい感触や、ふわりと香る彼女の吐息の匂いがらしくもなく司の胸を高鳴らせ期待に慄かせた。
 だが、いまはまだ、その衝動に任せてむしゃぶりつきたいのを堪える。
 肉の欲望と、わけのわからない自分の情動のままに動くことは、この女に隷属することだと、司の中の長年の意地とプライドが軋んで許さない。
 「…どういう風の吹き回しだよ。あれほど俺のベッドの相手はごめんだって、息巻いてたよな?」 
 答えさせようとして、口に指をいれたままでは喋れないことに気がつき、名残惜しく引き抜き、垂れた涎を親指で拭ってやる。
 「言えよ」
 抱きしめたまま、耳元で囁くとブルリと震え、つくしの喉がゴクリとなった。
 初心なそんな仕草さえ、彼の興奮を煽る仕草のようにも思える。
 だが、あらかじめセリフは考えていたのだろう。
 わずかに震えた語尾には思いつきではない、しっかりとした信念が宿っていた。
 「条件があります」
 「…条件?欲しいものはなんでも叶えてやるって、最初から言ってあっただろう?」
 司の中で、そんなセリフは想定内だし、なんの意外性もなく、むしろ必然だった。
 「金か?出世か?」
 警察組織での地位でも欲しいのか。
 人間の欲望に限りなどないのだ。
 この女は自分の肉体にどれだけの値段をつけるつもりなのだろうと、珍しく興味が湧く。
 だが、女がつげた条件のあまりの意外さは、司の予想をあまりに裏切っていて。
 「…行き擦りの人をベッドに引き込むようなことはもうしないで」
 「は?なんだって?」
 「あたしがいないところで、誰かと二人っきりになったりそういう機会を作らないで。もちろん、日本にいる間のパーティでのパートナーもすべてあたしが務めさせてもらうし、どこにでも同伴させてもらう、それが条件です」
 もう語尾は震えてなかった。
 だが、司の方が驚き…呆れて、抱きすくめていたつくしの小柄な体を自分から引き離し、胸もとにある顔を覗き込んだ。
 「それって、まさか、俺にお前と結婚しろとでもいうつもりじゃねぇだろうな」
 鼻で笑うも、つくしの顔はあくまでも真剣そのもので。
 「もちろん違うわ。日本にいる間のことだけよ。もう、他の女に声をかけたり、自分のベッドに引き入れることはしないで。あなたがその…性的に欲求がある時は、あたしが相手をします。それはあなたが日本にいて危険があると思われる期間ずっとよ」
 「…お前が、俺の夜の時間を守るってか?そのために俺のベッドの相手をするって?」
 ようやく、つくしの言いたいことを呑み込んだ司が、怪訝な顔で目をさかんにしばたく。
 「そうよ」
 「なんのために?」
 「今、言った通りです」
 …あなたを守りたい。
 …あなたをアメリカに無事に帰す。
 それ以外にないと言い切る、女の意図がそれこそなおさら図りがたくて。
 見据える女の顔には決意が宿って、本当に他の意図はないように思える。
 けれど、司にとって、そんな女の無償な態度こそ、不可思議で、不気味なものに他ならなかった。
 人間とは自分が一番大事なものだ。
 その自分の命を晒す以上、何かメリットがあるはず。
 だというのに、その命を晒す行為にさえ、さらなる犠牲で司に従うというつくしの真意が理解できず、逆に疑惑がこみあげてくる。
 が…。
 …ま、かまいやしねぇか。この女の意図がどこにあろうと、俺には大事なものなんか何一つないんだからな。
 ただ、目の前の女を味わいたい。
 白い素肌を引き裂き、女の柔肌に喰らいつきたい欲望に、下腹部が疼いた。
 「よくわかんねぇけど、まあ、いっか。けど、俺が飽きたらそれで終わりってこと忘れるなよ」
 実のところつくしにはそれが一番怖い。
 今は、自分に逆らう女が物珍しくて、司の興味を惹いている自覚があった。
 司を守るために…そう決意した想いが司の気紛れ一つで無駄なものになってしまう可能性が高いのだ。
 もうつくしには、他に守るべきものはなかった。
 司を守る…。
 自分の12年間の悔恨を贖う。 
 そのためにならどんな屈辱にも、恥辱にも耐えて見せる。
 「…わかってます」
 そんなつくしの悲愴な想いをどう思ったのか、司が嘲笑う。
 「…すげぇ自信。お前、俺を満足させられるつもりがあるんだ?」
 「そ、それは…わからない、けど。できるだけの努力はするつもりです」
 青くなったり赤くなったり、司の揶揄につくしはブチ猫のように顔色をまだらにさせていたが、目は反らさず真っ直ぐだった。
 …でけぇ目。
 まるで夜空の星のように、キラキラと煌めいていて、これが生命の光という奴かと、司らしくもなく感じ入る。
 つくしの目はいつも生きる力に輝いていて、覗き込むたび、倦んで疲れた司の凍り付いた心を揺さぶった。
 「ふん、毎日粗食か、俺の流儀じゃねぇな」
 呟いた言葉は本意ではなかった。
 ただ、目の前の女がどこまで譲歩するか、…いや単に困った顔を見たかっただけのことなのかもしれない。
 けれど元々、司は女をステーキに例えるような男なのだ。
 そんな男の呟きに憤慨することもなく、唇を噛みしめ、一瞬視線を反らせたつくしは、少し考え妥協した。
 「…あたしとだけ寝て、とまでは言いません」
 「……」
 「元々つきあってらっしゃる日本での恋人、それに婚約者や身元がハッキリとわかってらっしゃる方とはこれまでどおり交際を続けられてもかまいません」





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