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「アネモネ…全171話完+α」
第一章 Change the World②

アネモネ031

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 「明日明後日は、丸二日オフを取っていただけます」
 パーティ会場からの帰り、リムジンの中。
 司を中心に隣につくし、対面側のシートに西田が腰を下ろしていた。
 淡々と西田が告げるスケジュールに、司が肩を竦める。
 日々秒刻みのスケジュールをこなし、下手をすれば一日24時間ではとても足りない激務の司には、一日オフをとることさえ難しい今日この頃なのだ。
 「どういう風の吹き回しだよ。たしか今週末はパーティの梯子だって言ってなかったっけか?」
 司自身もワーカーホリックな自覚はあったが、その彼に輪をかけ激務をこなすこの秘書は、降り注ぐように仕事を振ってくれるのだ。
 もちろん、上司の体調管理も十分に考慮した上で。
 馬車馬のように働かせはしても、けっして無理はさせなかった。
 「パーティの主催者には事情を説明して、招待客たちへの口止めをお願いしましたが…」 
 「ああ、そういうことか。そりゃ、人の口には戸が立てられねぇつーからな。あれだけ人間集まってりゃ、派手に吹聴してくれんだろうな。…俺は気にしねぇけど」
 悪びれない司の物言いに、さすがに鉄面皮の西田も、溜息を禁じ得ない。
 「とりあえず、ほとぼりが冷めるまではしばらくの間、パーティへの参加は控えていただきます。その代り、パーティで懇意になっていただく予定でした方々と、来週は会食を組ませていただきました」
 「うげ…。辛気臭せぇジジィどもとツラ突き合わせてメシ食うのかよ。美味いもんも不味くなるぜ」
 「…そこは、辛抱していただきます」 
 司も本気で言っているわけではなかった。
 どちらにせよ、今の司にとってビジネス自体が巨大な遊戯のようなもので、そこでの勝利を得るためであれば、どんなプロセスも苦ではなく、他に優先したいものもない。
 「ま、しょうがねぇな。それなら、休みなんていらねぇよ。突発的に会食の予定入れ込むんなら、滞る業務もあんだろ?そっち、先によこせ」
 「いえ、どちらにせよ、来日して約10日。そろそろお疲れも出られる頃だと思います。今、無理をされるより、ここはゆっくりと休養されて先々に備えてください」
 「…ふん」
 疲れ…というほどではなかったが、実際、横っ腹に負った傷は命に別状があるものではなく、司にしてみれば軽傷の口だったが、実は横っ腹の裂傷よりもむしろその上…ヒビが入った肋骨の方が問題だった。
 骨の損傷は、骨折よりもむしろヒビの方が厄介なものだ。
 爆風で飛ばされた壁の一部がモロにあたり負った怪我で、ギブスも必要なかった。
 その上、日々激務で司自身が面倒臭がるという理由もあって、自然治癒も可能だとうことから特に治療を受けていない。
 ヒビは骨折よりも遥かに完治に時間がかかるが、司は元々痛みに強いタチでもあり、一見激しい運動さえしなければ日常生活に支障をきたしてはいなかった。
 しかしやはり、万全の時よりはずっと疲れやすかったし、無理はできない。
 全治3ヶ月…それが一応司を診察した医者の診断だった。
 ふと、視線を感じて司が振り返ると、つくしが彼の顔を難しい顔で見つめているのに出くわした。
 「…なんだ?」
 「いえ、…」 
 「………」
 一度は無言で先を促がす司に、困ったような複雑な顔をするばかりで先を続けなかったが、ジッと見つめられ、仕方なくしぶしぶつくしが口を開く。
 「…その、ろっ骨にヒビも入ってらっしゃったんですか?」
 確か西田からは聞いていない。
 言い忘れていたのだろうか。
 西田に視線を向けると、つくしへと会釈で返す。
 「申し訳ございません。私の洞察不足でした」
 「洞察…ですか?」
 「実は、代表の肋骨にヒビが入っているのがわかったのは、日本に来日してからで…ずっと隠してらっしゃったのですよ」
 「は?どうして…」 
 驚いて司へと視線を戻す。
 「面倒くせぇから」
 「はい?」
 「どうせ、ヒビなんざ、ほっておいてもくっつくもんだし、特に治療のしようもねぇからな。ガタガタ言われたくないねぇし」
 「ガタガタ言われたくないって…そんな。だからって、肋骨の骨折やヒビは身動きするだけで痛いでしょ?」
 「お前もやったことあんの?」
 「まあ、警察学校時代の訓練中にちょっと。あの時は笑ったり、息をするのだって、けっこう辛かった記憶がありますけど」
 「ふん、気が強くても女は女だな。これくらいどうってことねぇよ」
 …確かあたしと格闘まがいのこともしたわよね、こいつ。
 女と寝るにしても、それなりにろっ骨を酷使する場面もあったはずではないかと、つい下世話に勘ぐってしまう。
 しかし鼻で笑う司は平然としていて、強がっているようには見えない。
 …リンチされて、ろっ骨を折って入院した時だって、すぐに歩き回ってた奴だったっけ。
 司の回復力が犬並だったことを思い出す。
 多少、その頃より年を食ったにしても、少年時代から何かと無茶をしてきた男だった。
 「…そうですか」
 どのみち司は、常識とは真逆を行く男なのだ。
 世間の常識で推し測っても仕方がないと、つくしはそれ以上何も言わずに諦めて素直に頷く。
 だが、そんなつくしに今度は司が怪訝に眉根を寄せる。
 元々職業柄か…それとも単に司と話すのが嫌なのか、つくしはあまり口数が多い方でもなかったけれど、それでもこれまで司との雑談にも応じていたし、西田との打ち合わせにも積極的に参加していた。
 それなのに、パーティでのとんだ事件の後からほとんど口を効かなくなっていた。
 「お前、なんか元気なくねぇ?」
 「…慣れない場所に出て、ちょっと疲れただけです」
 「情けねぇな、それで俺の盾になれんのかよ?いくら格闘技が得意だからって、デカイ男の腕力と体力には勝てねぇっていうのによ」
 悪態をつく司にも、今日のつくしは特に反論してこない。
 それどころか、
 「…すいません、以後精進します」
 「なんか、ホント熱でもあんのか?気持ち悪い奴だな」
 内心困惑した司が、西田を見るも、西田も怪訝に首を傾げるだけだった。





 久しぶりの丸々の休日だ。
 ゆっくりと昼過ぎまで寝ているかと意気込んだわりに、司が目覚めたのはいつもより数時間長い程度だった。
 時計を見れば、まだ10時にもなっていない。
 上半身裸のまま、ベッドで大きく伸びをして欠伸を噛み殺した。
 「ふぅ…どうすっか」
 寝なおすには中途半端な時間で、そもそも学生時代は平気で怠惰な日常を過ごしていたと言うのに、慣れとは怖ろしいもので。
 日頃の遅寝早起きの習慣が身に馴染んで、とても今から眠れる気がしなかった。
 そもそも、司は普段からあまり睡眠が深いほうではない。
 少年の日はそれでもそんなことはなかったのだが、いつの間にか疲れれば疲れるだけ、なおさら眠れず、ほとんど不眠症に近かったのだ。
 …ま、さすがにここのところは疲れが溜まってたのか、けっこう寝れたよな。
 NYでは眠れない夜、酒の力を借りるか、倒れる寸前まで体を酷使して気絶するように睡眠を得ていた。
 その体を酷使する方法の一つが、女を抱き潰すほどにセックスすることで、後は日々のハードスケジュールが意図せずとも司の体に疲労を蓄積させてくれていたのだ。
 とりあえず寝起きで、今一よく働かない頭をシャンとさせるべくシャワーを浴びる。
 ポタポタ水滴の垂れる髪をバスタオルで拭きつつ、バスローブ一枚でいつものように居間へと向かう。
 …だが。
 「あの女、どこ行きやがった?」
 いつも司が起きる頃には、自室で身支度を整え待機しているつくしがいない。
 警備万全のこの邸で、宿直など必要ないというのに、毎日司の私室の居間のソファで寝泊まりをしていたはずが、今日に限ってその姿がないのだ。
 私室のドアを開け、外で待機している使用人たちに尋ねる。
 「おい、あの女はどうした?」
 「おはようございます。牧野さまでしたら、午前中はお休みされていまして」
 「休み?あいつが?」
 「はい、病院と美容院に行かれるからと、言づけをされております」





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