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「アネモネ…全171話完+α」
第一章 Change the World①

アネモネ028

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 綺麗だと思って欲しい男はもういない…抜け抜けと、自分に言いよっている彼に、そう言い放つつくしの度胸が小癪だと思うのに、小気味よくも感じて司は戸惑った。
 けれど、それを認めてしまうのは業腹で、司はあえて唇を歪めて鼻で笑った。
 「…よほど、男に縁がないんだな」
 「放っておいてください」
 ムッと唇を尖らせる女をさらにからかってやろうと、思案したところで運転手が目的地であるパーティ会場のホテルへの到着を告げた。
 「手、出せよ。今度は引きずられずに、エスコートされてぇだろ?」




 パーティに来る前は、なんだかんだといちゃもんをつけていた司も、いざつくしを同伴してしまえば、彼女を完璧にエスコートして、巧みな社交術を駆使し、海千山千の財界人たちに君臨する巨大財閥の跡取りに相応しい言動に徹していた。
 華やかな場に不慣れたつくしを上手くリードして、彼女の俄仕込みの張りぼての仮面を覆い隠してくれている。
 「…疲れたか?」 
 「まあ、それなりに」
 正直、愛想笑いに引き攣った顔の筋肉が疲れて、戻らない気がした。
 さりげない仕草で呼び寄せたウェイターから、ソフトドリンクのグラスを受け取って、手渡してくれる。
 「…とりあえず、それでも飲んどけ。どうせ、酒は飲まねぇんだろ?」
 「勤務中ですから」
 そうでなくても弱いのだ。
 こんなとこで、酔っぱらうわけにはいかないのは当然のことで、つくしはつくしで疲労を感じながらも、神経は常に司の周囲に気を配っていた。
 「…代表」
 傍から離れていた西田が戻ってきて、司に耳打ちをする。
 一応周囲には洩れないように気を使っているようだったが、すぐ傍に立ってるつくしには丸聞こえだった。
 「は?この間の女?」 
 「…ええ。東洋商事と取引がある中小企業の重役の子女だったらしく、招待客の中に」
 …この間の女?
 「西田さん、それってもしかして、この間、代表がお持ち帰り…じゃなかった、え~、その意気投合されてお邸にご招待した女性がここにいらっしゃるんですか」
 「ええ、そのようですね。外に立たせているボディガードが見かけたそうです」
 直接は会っていなかったが、邸の執事から、かなり非人情な追い払い方をしたのだと後から聞いていた。
 「は、俺が誰だか知ってんだ。滅多なことはしねぇだろ?」
 「…いつか刺されますよ」 
 つい口にしたものの、シャレにならないことだったと、つくしが口を噤む。
 が…。
 「ぷっ」
 いま、噴き出したのは西田だったか。
 てっきり感情がないのではと、疑ったことまである鉄面皮の秘書へとつくしが視線を向けると、もうすでに何食わぬ顔を取り繕っていた。
 …気のせいだったのかな。
 「とりあえず、次、俺の挨拶だよな」
 つくしの懸念も西田の忠告も軽く流し、司は壇上へと向き直った。





 「…経済のグローバル化に伴う国内産業構造の変化や高度情報社会の進展に適応し、市場マーケットの臨機応変的なスリム化が当面の課題であり、それに対応できない企業が淘汰されていくのは必然でしょう」
 パチパチパチ。
 スピーチを終えた司に、人々が賞賛の拍手を送る。
 そんな彼を少し離れた舞台の後ろで見守りながら、つくしは時の流れを感じていた。
 少年の日から司は、財閥御曹司という生まれに反発しながらもパーティなどの社交をこなしてはいた。
 それでも尖がった反抗的なところは抑えられず、時には無用な反感を買っていたところにもつくしは出くわしたことがある。
 それなりに卒なく自分の役割をこなしてはいたものの、当時はさすがに場を征するほどではなかったのだ。
 …カエルの王様。
 かつてそう司をたとえたのは、つくし自身だったか。
 英徳学園という狭い社会の中でだけ君臨していた少年は、今や世界を制する大企業経営者へ。
 その立場に相応しい能力と、威風、人を惹きつけるリーダーシップ。
 私生活の乱れとは真逆に、企業人としてはあまりに大きく成長を遂げていた。
 …ずいぶん遠くなったな。
 つくしは思う。
 今思えばあんな事件がなくても、いずれは世界の違いで二人は別れていたに違いない、と。
 …それを考えたら、どちらにせよ、同じだったのかも。
 当時さえ互いの立場の違いに頭を悩ませていたが、大人になったらきっともっと歴然とした差異を自覚しただろう。
 そう考えたら、不思議に心が凪いだ。
 正直、元カレだと言い聞かせていても、その面影に心をかき乱されていた。
 どんなに最低な男に成り下がっていても、出会いの当初から、司は最低の男ではなかったかと思い出すたび、ほろ苦い切なさと苦笑が零れた。
 ふと、壇上から見下ろす視線の先、見慣れたボディガードが、集まっている群衆の中で誰かを押し留めようと奮闘している。
 …あれは。
 憤然とボディガードを押しのけようと、司の方を指さしたり癇癪を起している女にも見覚えがあった。
 まだ壇上の主催者や数人の実業たちと談笑を交し合う司を横目で見やって、人々の視線が自分に集まっていないのを確認し、檀下へと下って諍っている道明寺家のボディガードと意気込んでいる女の傍へと歩み寄る。
 先に気が付いたのは、こちらを見ていた女の方が先だった。
 「…あなた、確か、代表と一緒にいた」
 怪訝そうに呟き、だが次の瞬間には気まずげに紅潮した顔を反らしたのは、さすがにつくしの前で繰り広げた痴態を素面の状態で思い出したからだろう。
 「どうされたんですか?」
 つくしのかけた声に、女を押し留めていたボディガードも気が付き、ホッと振り向いた。
 「いえ、こちらの方が代表に近づこうとされていましたので」
 「さっきも、傍に行こうとしただけで、止められて会わせてくれないのよ!」
 「あ~」
 どうしたものかと、つくしも視線を泳がせて思案する。
 女の心づもりはわからなかったが、その意気込んでいる様子と司の非人道ぶりからして、会わせたとしてもロクな結果にならない予感がビシバシだ。
 「えっと、その、代表に会われたいのはどのようなご用件なのでしょうか」
 「あなた、バカ?」 
 「……」
 いきなりのバカ呼ばわりに、さすがのつくしも言葉を詰まらせる。
 「私は商売女じゃないのよ!それなのに、あんな風にお金なんか渡されて、野良猫みたいに追っ払われるなんて、ありえないでしょッ!?あんなに熱い夜を過ごしたのに、代表にも会わせて貰えないなんて」
 ありえないでしょ…と言われても、ありえたのだ。
 そしてつくしにしてみても、、女の気持ちもわからないではなかったけれど、あの男では相手が悪いとしか言いようがなかった。
 だんだんエキサイトしてくる女の高い声音が、周囲の視線を少しづつ集め始めている。
 「あの、すいません。このお話、外でさせていただけませんでしょうか?」
 「代表に会わせてくれるの?」
 「いえ、たぶん、代表とお会いになっても、…そのあまりあなたにとっていい結果にならないと思うのですが…」
 歯切れの悪いつくしに女の顔が見る見る強張ってくる。
 「もしかして…代表は護衛だなんて言ってたけど、ホントはあなた、代表の女の一人なの?!」 
 口にしたときには、確信しているのがわかる表情で、つくしを睨み付ける。
 「…いや、そうじゃなくってですね」
 「なんだよ、傍、離れてるんじゃねぇよ」
 不機嫌な顔の司が背後から現れ、つくしの肩に手をかける。
 …あっちゃあ、なんつー、間の悪い時にこのバカ男。





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