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「アネモネ…全171話完+α」
第一章 Change the World①

アネモネ027

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 窓ガラスに映る景色は、NYにいても東京であっても司にとっては大差ない。
 たとえ、どんな僻地の片田舎であったとしても、それはかわりなかっただろう。
 それは街並みだけではなく、人も同じで。
 どこにいても、どんな人間と一緒にいても、餓える虚無感は司自身の精神を蝕み無感動にしていた。
 それがここ数日どうだろう。
 十数年間、荒げることがなかった声を荒げ、くだらないことで口論をし、気が付けば自分にそんな感情がまだ残っていたのかと驚くような“楽しさ”に声をあげて笑っていた。
 それは今、この車の窓ガラスの向こうに映る女が、すべてその要因で。
 女が怒るとわかっていてわざと逆らったり、嫌がりそうなことをあえてして見せた。
 …手足も棒切れみたいで、凹凸が少ない色気のない女。
 一見、外見は好みのタイプだったとはいえ、その個性からして、そこに女を感じることはほとんどなかったはずだ。
 ただSPらしからぬ華奢な見た目に反した火の玉のような気性が、大の男でさえ怖気づく司の恫喝にも真っ向から向かい合う度胸が気に入って、面白く思っていただけのはずだったのに。
 結いもせず背に流した真っ直ぐで艶やかな黒髪。
 大きな目や小作りな顔が、濃い目の化粧でコケティッシュな妖艶さに変わった。
 意外に筋肉質だがほっそりとした手足はしなやかで、華奢な肢体も女性らしい丸みを帯びていて司の目にひどく魅惑的だった。
 染みひとつない真っ白な肌は、瑞瑞しく、しっとりとした肌触りを想像させる。
 動きやすさを重視したミニたけのベアトップデザインのソワレは、童顔の彼女によく似あっていた。
 いつものようにスマートフォンに触れる細い指先が、画面を移動する合間に、落ちてきた髪をかきあげ耳にかける。

 彼女のうなじの抜けるような白さが、司の喉に渇きを思い起こさせる。
 ゴクリと喉を鳴らしたところで、窓ガラス越しに視線があった。
 けれど、それは司の一方的な思い過ごしだったようで、訝しげに首をかしげたと思ったら、再び視線をスマートフォンへと落として、後は司を気にしようともしない。
 女の関心がどこにあろうと司にはどうでもいいはずなのに、なぜか彼を見ない彼女がひどく憤ろしく、味気ないように思えてつまらない気持ちにさせられる。
 …俺を見ろ。
 だが、そんな司の心の声は、相手に通じるはずもなく、無性にイラつき舌打ちを打つ。
 「知らん顔してんじゃねぇよ」
 「え?」
 いつの間にか声は唇から零れていたようで、つくしの応えで司自身もそれに気が付く。
 「あの…何か言いました?」
 怪訝な顔には当然、司への賛辞など含まれていない。
 結局…パーティでのパートナーはつくしが務めることとなった。
 警備上の理由からだったが、最終的に司自身の意志だった。
 自分が、ダメ出しをしたのに。
 溜息をつきつつ、パートナーとしてでなく随従として傍近くで警備することを条件につくしが引き、一度は女秘書をパートナーとして同伴させることでまとまりかけたにも関わらず、だ。
 そもそも、どうしてもつくしが嫌だとか、そういう理由で他の女にパートナーをすげかえようとしたのではなかった。
 つくしの代役で司のパートナーとしてパーティに同伴できると期待した時の、女秘書の輝く顔が思い浮かんで司は唇を歪める。
 …普通、ああいう顔するだろうよ。この俺のパートナーだぞ。
 ところがつくしの反応は、西田の指名に軽く会釈で答えた程度で、特に感慨もなく、表情さえも事務的なものだったのだ。
 司の曲がった臍が、それでなお曲がってしまった。
 …この女は俺に気がある。
 そう思えばこそ、普段は滅多に連れ帰らない行き擦りの女を引っ張り込み、いちゃつく様子さえ見せつけてやったのに。
 それなのに、どうしてこの女は堕ちないのだろう。
 頷きさえすれば、“女”にしてやると司自身が申し入れてやっているというのに。
 この世のどんなものでも、快楽でも、どんな権力や地位でさえ手に入れることができるのだ。
 喜び勇んでカラダを投げ出すどころか、冗談じゃないと怒り出し殴りかかってきた。
 それどころか、司には意地を張って拒絶した癖に、類には媚びていたのだ。
 腹を立て、意趣返しをしてやっても、動揺していたのは女を引っ張り込んだ当初だけのことで。
 …しまいには『夜を過ごすなら、馴染みの女か婚約者にしろ』と分別くさった顔で忠告までしてきやがった!
 実際、好みの真っ直ぐな黒髪の女だったとはいえ、持ち帰った女にそれほど食指が動いたというわけではなかった。
 自分でも自覚していたが、半分以上はつくしへの当てつけで、見せつける意図の為に他ならない。
 案の定、大して愉しい情事でもなかった。
 そもそも司の情事は、彼自身愉しいと思うことはほとんどなくって、だいたいが溜まった性欲を晴らすためだけにすぎないことが大半なのだ。
 だから、愉しむために一時期はかなりアブノーマルなことにも手を出した。
 刺激と昏い興奮。
 普通に女を抱くよりは、面白いと思うことも多少はあった。
 だが、結局は女を抱くと言う行為は生理的欲求の解消法にすぎなくって、そんなものより巨額を動かすマネーゲームや、自分自身を危険に晒すスリルの方がよほど快楽中枢を刺激し、愉しませてくれた。
 …死にたいのですか。
 日本に来日するときに、母親の楓が眉根を寄せて尋ねてきた問いを思い出す。
 …別に死にたいわけじゃねぇよ。
 そう思う。
 ただ、漫然と生きているのがつまらないだけで。
 少しでもこの虚無を、焦燥を、寂寞を…忘れさせてくれるなら。
 「代表?」
 「…いや、ずいぶん化けたものだな」
 怪訝だった顔が、自分を見て片眉を上げる司に、ああ、と合点する。
 「そうですね。ずいぶん磨きこんでもらいました」
 「俺の女になったら、仕事でなくても、いくらでもそういうふうに化けることができるんだぜ?」
 もはや、司の申し出は挨拶のようなものだった。
 つくしが応じないのが分かっていて、それでも一応かけるスカウトのようなもの。
 そして、その予想に違わず…。
 「何のために?」
 「…何のためにって」
 「普通、女性が綺麗になりたい理由って、その綺麗な姿を誰かに見てもらいたいからですよね?」
 「まあ、そうだろうな。俺は女じゃねぇし、女が化けた姿なんぞ見たいとも思ったこともねぇからわかんねぇけど」
 「そうでしょうね。…あたしも同じです」
 「……」
 「綺麗だと思って欲しかった人は、もうどこにもいませんから」





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