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「アネモネ…全171話完+α」
第一章 Change the World①

アネモネ025

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 今夜はどうやら、つくしにとって眠れない夜となりそうだ。
 ソファに腰掛け、抱え込んだ片膝に額を乗せて目を瞑る。
 男女の激しい交接に軋むベッドの音。
 時折聞こえる女の嬌声も、もう慣れた。
 司が…彼の寝室ではなく何十とある客室の一つに女を連れ込み、小一時間ほどが経っただろうか。
 『はああぁん、……んぁ、ああっああんあんあん、ああああああッ』
 やがて尾を引くような女の長い呻き声がドアの向こう側、寝室から聞こえ、パタリと物音がやんですべてが終わったことを知る。
 …とんだ、デバガメだったな。
 その頃には、つくしの方も虚ろな気分だったが苦笑する余裕もできて、警備上できれば得体のしれない女性と同衾して寝るのは辞めて欲しいのに、と至極冷静に思うことができた。
 どうせ、司に直接言ったところで、誰の忠告にも耳を貸さないのだから、徹夜の覚悟を決める。
 しかししばらくして、バタン、バタンというドアの音がして、寝室にも直結しているシャワー室から水音が聞こえ始めた。
 その音を聞くともなしに聞いていると、
 バッタン。
 「おい、寝てんのか」
 居間に通じる方のドアから司が出てきた。
 もちろん、つくしは寝てなどいない。
 けれど、まさか声をかけられるとは思っていなくて、ぼんやりと司を見返すのみで。
 バスローブ一枚の司の髪はストレートに伸びて、ポタリポタリと滴が髪から伝って床に染みを作る。
 「…今夜はご一緒されるのではないんですか?」
 「気味が悪くて、行き擦りの女となんて寝てられっか」 
 …それなら、セックスするのは気持ち悪くないのかと皮肉に思う。
 けれど、そんなことを言う筋合いではないし、言ったところで変に勘ぐられるだけだ。
 「それに、いくら俺でも寝込みを襲われたらやべえしな」
 「…そうですね」
 大きく息を吐き、つくしも踵を返す司の後を追って部屋を出る。 
 そのまま日本に帰国して以来、利用している部屋へと戻るのかと思ったら、司は別の部屋へと足を運んだ。
 …家の中なのに、徒歩で何分も歩いてもまだ家の中とか、相変わらずどんだけって感じよね。
 懐かしい感慨が浮かぶ。
 が…。
 「…ここ」 
 司に先導され、入室した部屋に記憶がくすぐられ、つくしは大きく目を見開いた。
 「俺のねぐらの一つ。そん時そん時で、特に決めねぇで寝る時もあっけど、昨日まで寝てた部屋とここ、後はもう一か所くらいが気に入ってる俺の私室」
 ちょうど、邸の東の角に位置するだろうか。
 昔の一時期、司が楓の部下であるボディガードたちの目を盗んで抜け出すのに便利だと寝起きしていた部屋。
 もしかしたら、多少小物や家具の入れ替えもあったのかもしれなかったけれど、つくしの記憶に残る部屋とほとんど佇まいは変わっていなかった。
 「お前はソファで寝んだろ?」 
 「え、あ…はい」 
 力なく返事を返すつくしを揶揄るように覗き込み、司が甘く微笑む。
 明らかに、つくしの反応を愉しんで、彼女の感情を引き出したがっている。
 「ソファじゃ、疲れとれねぇんじゃね?けっこう刺激的だっただろうし、もしかして興奮して眠れねぇかもな。なんなら俺と寝るか?添い寝しろよ」
 「…いえ、けっこうです」
 だがつくしは挑発に乗らなかった。
 というより、心が疲弊しているところに、トドメを刺された気分で浮上できていない。
 今までのように過敏に反応するでもなく、淡々と答える彼女に物足りなさを覚えたのか、司は鼻を鳴らしてさっさと寝室へと引きこもってしまう。
 …なんでここのなのよ。
 つくしの記憶にある愛した男の言動とはまるで一致しない司の所業に、やっと甘い感傷をふり捨てられそうだったのに…。
 『…添い寝してやろうか』
 笑い含みに、つくしをからかうような少年の声が蘇る。
 あの時のように、こうして二人。
 似たような状況なのに、なんて隔たってしまったのだろうか。
 「…もう、寝よう」
 明日もまた、この現実はかわらない。
 いつまでも、少年の日の彼の笑顔が忘れられない自分はなんて愚かで執念深いのだろうと、自分を嗤い…つくしはソファへと横たわった。





 次の日…。
 つくしが目覚めたのは、ほぼ司と同時間だっただろう。 
 寝不足に痛む頭に顔を顰めたところで、寝室のドアが開く。
 朝の挨拶をするでもなく、ソファに腰かけていたつくしをチラ見して、司はそのまま洗面室へと入っていった。
 …て、いうか、寝室からでも出入りできるのに、なんでわざわざ居間まで出てくるんだろう。
 と、そんなことを取り留めもなく考えていたら、今入ったと思った司がすぐに顔を覗かせ、一言つくしに命じてくる。
 「お前、寝室のクローゼットから着替えだしとけ」
 「…は?」
 聞き返す間もなく、司は再び洗面室へと引きこもってしまった。 
 …あたしはあんたの専属小間使いじゃないつーの。
 そうは思いつつ、そのためだけにわざわざ誰かを呼び出すのも気が引ける。
 経験がないわけでもなしと、重い腰をあげた。
 ちょうど、着替え一式をそろえたところで司が出てきたので、つくしが手に持った下着やらYシャツを渡すと恥ずかしげもなくその場でバスローブを脱ぎ捨て着替えだす。
 「ちょ、ちょっと!」
 「…スーツは?」
 「え?あ…ああ。いま」
 一瞬目に入った古い傷跡に目を背けかけ、
 「ま、待って!」
 「…あ?」 
 「包帯。…そこ、まだ完全に傷塞がってないでしょ?」
 軽傷だと聞いていたが、つい最近の爆破事故の傷跡はけっこう派手で、先日の自分の攻撃はかなり怪我人には酷なことだったの思い至り、ついジッと凝視してしまう。
 そのつくしの自分の方が痛そうに歪めた顔に、首を傾げ、司も自分の傷跡を見下ろしアッサリと撫で下ろして肩を竦めた。
 「ああ、別にこんぐれ…大したことねぇよ。現地の医者が藪医者で、ザクザク縫いやがったから、けっこう見た目派手だけど、深さはそんなになかったからな」
 「…そうは言ったって」
 「それより…」
 ベッドわきのサイドテーブルの腕時計を手に取り、司は顔を顰める。
 そして、それをヒョイっと背後に投げつけ、つくしへと顎をしゃくる。
 「違う時計持って来い」 
 「え?今の時計ッ?!」
 司の所持品なら、安物のはずがない。
 驚いて、床に転がった腕時計を慌てて取り上げ確認するが、どうやら毛足の長い絨毯がクッションになったようで、元々頑丈なのもあるだろう、壊れてはいないようだったが、やはり予想通りにダイヤの文字盤のいかにも高価そうな腕時計に、つくしは溜息をついた。
 「…投げないでくださいよ」 
 「その時計も飽きた。さっさとしろよ」
 「もうっ。でも、先に包帯巻かないと」
 「こっちは自分でやる」
 どうやら他人に傷は触らせたくないのだと、見当をつける。
 元々、司にはそういうところがあった。
 使用人に風呂の仕度や着替えを平気で手伝わせるお家柄でありながら、司は極力自分の身体に他人が触れるのを嫌がっていた。
 その潔癖症が、女道楽は平気だなんて矛盾も感じるが、うら若い少女でもないのだから、そのことに対して嫌悪を感じることの方が可笑しいのだろう。
 仕方なく、またついてしまいそうになっていた溜息を呑み込み、今度は貴金属類が入っている棚を探す。
 「ブツブツ、まったく不用心なんだから。貴重品くらい金庫に入れておきなさいよ」
 つくしの独り言にも司が律儀に答える。
 「…うちは、普通にウン千万する骨董品もそこらに飾ってるからな」 
 「ああ、なるほど」
 そのための警備システム。
 博物館や国家機関並だ。
 「あ…」
 ゴソゴソと探った棚の奥。 
 どう見ても司の物ではないネックレスに出くわす。 
 「…これ」





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