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「アネモネ…全171話完+α」
第一章 Change the World①

アネモネ024

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 「…その厭らしい顔を近づけないでって、前にも言ったわよね」
 「……」
 怒りを含んだつくしの低い声音に、司が不機嫌に顔を顰め、屈み込んでいた体を起こす。
 「あたしはあんたの護衛の任務を命じられてここにいるのであって、あんたの下の世話をするためじゃないの。冗談じゃないわ」
 「ふん。…SPなら、屈強な男や、女にしてもプロレスラーみてぇにデカイ女だっているのにか?」
 「……」
 つくしの腕や足の動きを警戒しながら、ポニーテールに結い上げた彼女の長い黒髪を手に取り、司が口づけを落とす様さえセクシーだ。
 この男に耽溺する女たちならば、さぞ腰砕けになったことだろう。
 そうでないつくしでさえ、髪の毛の一本一本に神経が通っているのではないかと錯覚するほど、鼓動の音がうるさい。
 「お前のちっこいカラダも、細い手足も悪くねぇ。容姿は十人並だが、この真っ直ぐな黒髪は綺麗だぜ」
 蠱惑を含んだ眼差しでニヤリと笑われ、それでも赤面しないようにつくしはグッと掌に爪を立て、ただ男の顔を睨み据える。
 「俺は元々、牛みてぇに肉感的な女も、デルモみたいなコテコテのデカい女も好みじゃねぇんだよ」
 じゃあ、今持ち帰ろとしてる肉感的な女はどうなんだと、つくしは内心で毒づく。
 以前に奉仕させていた女秘書も、司の言ういわゆるコテコテのモデル体型の女で、総二郎たちが好んでいるようなタイプだった。
 つくしが視線を反らさないまま、握りしめた拳に力を込めたところで男はアッサリと手を離した。
 「わざわざSPの規格の合わない…俺の好みに、ドンピ、いや、近いタイプのお前を俺んとこによこした警視総監の意図はなんなんだろうな」
 「……少なくてもあんたが思っているようなゲスな理由のはずがないわ」
 「ふん、まあ、いい。無理強いは趣味じゃねぇんだ。…そんなことしなくても、女なんかいくらでも寄ってくるし、手に入らなかったことはねぇし?」
 「……じゃあ、あたしがその最初の女になるってことね」
 「そうかな?お前、俺を守りたいんだろ?」
 「自惚れないで!それは、あんたを守るようにと派遣された警護官としての…ッ」
 「どっちだって同じだろ?国の威信がかかってる警護対象が害されたとなっちゃあ、お前の立場はねぇよな?」
 それはそうかもしれない。
 だが、そもそも、それならば司が素直に国の保護を受け、もっと厳重な警備を受け入れるべきなのだ。
 「…そちらの女性は、あなたのタイプだという女性とはずいぶん違う感じの方のようですが」
 司の背後、向かい側に立っていた他のボディガードの目が痛い。
 司の護衛としてずっと一緒にいるのだ。
 この男の女性関係の派手さや、つくしに対して行っているコナかけなどとうに知られているだろう。
 司の愛人としてではなく、護衛として派遣されたつもりの彼女としては居た堪れない思いだった。
 …やだ、変な目で見られてそう。
 慣れているだろうから何食わぬ顔をしてくれているが、裏でどう思われているかわからない。
 とりあえず、いつの間にか怒りに任せてタメ口になっていた口調を改める。
 「女性を連れ帰るなとは、私も言いません」
 「じゃあ、ゴタゴタ言うな」
 「でもっ、夜を共にお過ごしになるなら、それこそこちらにもわんさといらっしゃるでしょう馴染みの女性なり、婚約者になさってくださいッ」
 「それじゃあ、つまんねぇだろ?贅沢好みの俺様だって、たまにはステーキばかりじゃなくって、違うもんも食いたくなるんだよ」 
 「ス、ステーキッ!?」
 女を食べ物に例える司の無神経さが信じられない。
 「ま、穴さえあれば、結局どれも同じなんだけどな」





 「…あん、代表。何のお話だったんですかぁ?」
 つくしと司が不毛な言いあいをしている間に、司の連れ込んだ女は、十分にリムジンの内部を堪能したらしくホクホク顔だった。
 さすがに小声で話していたので、二人の会話の内容など聞こえていなかっただろうが、聞こえていたとしてもこういう女性なら、一夜の夢だと割り切れるのかもしれない。
 …それとも、チャンスだと思うのかな。
 横に乗った司の肩に即座にしなだれかかる女の横顔が、高校時代、司やF3を取り巻いていた女生徒たちの顔と重なる。
 憧憬、羨望、欲望、さまざまなものが渦巻いていた。
 だが、それもつくしの偏見なのかもしれない。
 そして、認めたくはなかったが、変わってしまったとはいえ、かつて愛した男に意図も容易く身を任せられる女への嫉妬が混じっていないとは言えなかった。
 どうせ、司以外の誰も愛することができなかったのだ。
 望まれたこともあったのに、付き合うことができなかった。
 触れ合うことさえできなかったカラダなら、彼を守るために一時のことだと投げ出すのも悪くはないのかもしれない。
 …別に、たかだかセックスじゃない。
 そう思う。
 そう思うのに、懐かしいコロンの香が、かつてつくしが愛し愛された少年の面影を宿す横顔が、切なくて、哀しかった。
 あれほど自分を大切にしてくれた男と…遊びの関係を結ぶ。
 宝物のように触れてくれた手に、誰とも奥深く繋がったことのない自分のカラダを玩具として差し出す。
 むしろ、全然違う男だったら割り切れたのかもしれない。
 いや、そもそもそんな妥協を思い浮かぶことすらなく、拒絶できていただろう。
 司に媚びることに夢中だった女が、やっと司に続いて乗り込んできたつくしに気が付く。
 「やだ…二人っきりじゃないの?」
 「すいません、車の備品だと思ってください」
 ないとは思うが、フィリピンでは司の夜の相手をしていた女性が爆発物を持ち込んだのだ。
 不審な気配がないか見守らないわけにはいかない。 
 他のボディガードは財閥に雇われているので、司の睨みに対抗できなかった。
 「だ、そうだ。気にすんな」
 司の手が女の長い黒髪を撫でる。
 「…やん」
 それに嬉しがって喉を鳴らす女の声は、猫のようだ。
 つくしもあえていちゃつく男女を見ていたいわけではない。
 さりげなく視線を窓の外に移す。
 けれど、見たくなくても鏡面のように磨かれた窓ガラスが絡み合う二人を映し出した。
 「代表ぉ、ん…ぁんん」
 重なり合う影。 
 女の甘い嬌声。
 噎せる濃厚な熱気。
 時々聞こえる水の音が、つくしの胸と心を焼いて、物理的な痛みさえ呼び起こす。
 …耳を塞ぎたい。
 …目を閉じることができれば。
 つくしはただ、ただ、虚ろな想いに窓ガラスの向こう、睦み合う男女の姿を見守り続けた。





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