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「アネモネ…全171話完+α」
第一章 Change the World①

アネモネ023

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 …そろそろ帰る頃かな。
 立ち仕事や、身体を使うことに慣れてはいてもさすがに立ちっ放しは疲れる。
 ましてや周囲に気を使い、部屋の中の話し声や物音に過敏になっていればなおさら。
 …違うな。
 集中している時には疲れを感じない。
 あとでドッと来ることはあっても。
 つまり、いまのつくしは、よけいなことに気を取られて気もそぞろになっているということなのだろう。
 『すごぉい!そんなことがあるんだぁ』
 『うん、今度君も一緒に来る?』
 『総二郎の誘いは気を付けた方がいいよ。そいつ悪い男だから』
 『ええっ!そうなんですかぁ』
 『よく言うぜ、あきら、悪い男はそっちもだろ?』
 『もうっ』
 女性たちとジャレあっているのは主に総二郎とあきらで、類はもちろん司の声は聞こえない。
 だが…。 
 『クスクス。…ん、ぁっ、ダメ。道明寺さぁん』
 時折女の甘い声が、つくしのカンに触り、胸の奥にじんわりとした不快感が滲む。
 ふと遥か昔のことであるのに、ついさっきにあった出来事のように、海が司の入院先に入り浸っていた頃のことが思い浮かんで、気分が暗く塞いでしょうがない。
 …あたしったら、もしかして執念深いのかな。
 今も司を好きだとか、未練だとかそんなものがあるわけではないのに、元カレだというだけでわだかまるものなのか。
 半分が身の危険を忘れて行き擦りの関係に耽溺するバカな男への呆れだったが、後の半分のうちの何割かが元カレである司自身への憤りにも似た面白くない気持ちと…どこか切ない気持ちで。
 「…そろそろ、お開きみたいですね」 
 相棒となっているボディガートの呟きで、席を立ち帰り支度をする室内の気配に気が付き、つくしは我に返った。
 ドアが開き、それぞれに…類を除き…女たちを腕にぶら下げた面々が中から出てきてつくしたち護衛は、頭を下げる。
 さすがに総二郎とあきらは気まずい気持ちもあるようで、つくしと目が合うとそれぞれバツが悪い顔で、片手を小さくあげる挨拶を残して通り過ぎて行った。
 これからお持ち帰り、というわけなのだろう。
 つい視線が冷たくなってしまう。
 その後に続く類が、ポンポンとつくしの肩を優しく叩いてくれて、強張っていた気持ちがわずかに和む。
 『またね、牧野』
 人前だからなのか、囁きは口の動きだけだった。 
 つくしも類の気使いを受け取り、頷くだけに留め、心の中で呟いた。
 …またね、類。
 そんな二人を冷たい目で見据える視線を感じて、つくしが顔を上げる。
 すると、唇の端に冷笑を浮かべた司が、彼女を見下ろしていた。
 司の腕にぶら下がる女の顔は誇らしさと興奮に上気して、うっとりと司の顔を見上げる潤んだ目や、ぬめるような唇のグロスがひどく色っぽい。
 そんな二人をぼんやりと見送って、さっさと店の出口へと向かってしまった司をつくしは慌てて追いかける。
 「今度、西門さんがおっしゃっていたお店に、私も連れて行ってくださいね」
 「……気が向けばな」
 「嬉しい。きっと、これから行く代表のお邸も、すごい豪邸なんですよね」
 嬉しそうに司の耳元へ伸び上がっては、女が盛んに囁いている。
 その言葉に、刑場に引きずられる牝牛よろしく付き従っていたつくしが、ハッとした。 
 …ちょっと、待ってよ。マジで、あんたまでお持ち帰りするつもり?
 普段なら文句を言う筋合いではないし、好きにしてくれと言いたいところだが、今は状況が状況なのだ。
 …こいつ、自分が今、身元もしっかりしていない相手を引き入れられる身の上じゃないってこと自覚ないわけ?
 司もバカではない(バカではないかと思う部分も大いにあったが)。
 自分の立場をわかっているだろうし、フィリピンでの体験もあるのだからむしろ熟知していただろう。
 だが、それでも西田が言っていた言葉と彼の性格がつくしの頭をよぎる。
 『自分の命を質に、スリルを味わっていらっしゃる』。
 まだ司の傍について数日だったが、彼の言動を見ているとつくしもそんな気がした。
 仕事はちゃんとしているのだが、生活全般、司の自分の人生に投げやりのようにつくしには感じられる。
 ともに付き従っているボディガードたちに目で確認をするも、二人とも困った顔で肩を竦めるばかりで諌めるつもりはないらしい。
 …つーか、あいつを諌められる奴なんているわけないか。
 それが唯一出来そうな連中は先に行って、諌めるどころか当の総二郎とあきらなどは自分がどっぷり鼻の下を伸ばしているところだろう。
 類は…無理だ。
 つくしが頼んでも嫌な顔をするに決まってるし、頼まれてくれたとしても司が彼の言うことを素直に聞くとは思えなかった。
 仕方ないので、意を決する。
 司が外で待っていた迎えのリムジンに女を乗せ、自分も乗ろうとしたところで、つくしは声をかけた。
 「あの、代表」
 「……なんだ?」
 無視されるかと思っていた。
 けれど、不思議に司はつくしの呼びかけを無視することがない。
 「あの…」
 チラッと車内で燥いでいる女性に視線を向け、躊躇しつつも司へと歩み寄る。
 冷然とつくしの動向を見守る司は、彼女の言葉を黙って待っていた。
 「その…そちらの女性もお邸にお連れになるおつもりですか?」
 「…そうは見えねぇか?」
 …見えるわよ。
 言いにくいから遠回しに言っているのに、察して欲しいと内心頭を抱える。
 「今までにも、お会いしたことがある方なのでしょうか?」
 「…はあ?バカじゃねぇの、お前」
 「バカ…」
 バカにバカ呼ばわりされたくなかったが、人目がある。
 「日本に戻ったばっかで、会社と邸、取引先しか往復してねぇ俺が、いつこの女と知り合う機会があるんだよ」
 「…じゃあ」
 「今さっき、初めて会ったに決まってんだろ?」
 ニヤリと笑う男の顔に、ヒクつくのを抑えられない。
 …あの女秘書さんとも初めて会ったとか言ってたわよね。
 それであの狂態だ。
 「…初めて?」
 「おう。俺のファンで邸を一度見てみたいとか言うからよ、見た目も体も悪くねぇから、今日はお持ち帰り」
 「……」
 平然と言い捨て、さっさと自分も車に乗ろうとするので、慌てて呼び止める。
 「ちょっと、待ってくださいッ!」
 「…なんだよ、うぜぇな」
 「うざいじゃありませんよッ。そんな…行き擦りの女性をお邸に連れ込むなんて、ご自分のいまの立場がお分かりなんですかッ!?」 
 わからないはずがないだろうという意をこめたつもりだった。
 けれど、相変わらずふざけた態度を崩さない司に、つくしはグッと拳を握り込む。
 「立場?お前に俺の立場をうんぬんされるいわれはねぇんじゃねぇの?」
 「なっ!?」
 「だから、嫌だつーたんだよ。お前らみたいな護衛は黙って俺の周り固めて守ってりゃいいもんを、国の飼い犬はあれやるな、これやるなと口出ししてきやがる。それが嫌でアメリカを後にしてきたのに、日本でもお前みてぇな小うるせぇハエをつけやがる」
 「は、蠅ッ!?」
 あまりの酷い言い草に、つくしの顎があんぐりと下がる。
 「…ま、それでも」
 「なッ」 
 すぐ横に寄せらた秀麗な美貌に、思わず仰け反る。
 触れられていたら人前でも構わず一発入れるつもりだったが、手や体はどこにも触れていなかった。
 ただ、温かな息遣いが耳元に掛かって、カッとつくしの頬に朱を上らせる。
 強い煙草の匂いと酒の匂いに混じって、ほんのりと香る懐かしいコロンの香に心が震えた。
 「お前がつきあってくれてもいいぜ」
 「…なにを」
 「俺はやりたことをやめたりはしねぇ。たとえどういう理由があろうと、女が抱きたきゃ我慢しねぇんだよ。…けど、お前が気に入った」 
 「…っ」
 「俺を守りたいんだろ?昼も夜も警護したいんだったら、俺のベッドの相手をしろよ。それなら本望だろ?」





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